どこへ行ったか、日本のモラルは…。
ここのところ毎日のようにテレビでは一流ホテルの経営陣が頭を下げている。
「どうもすみませんでした。」と大の大人が揃って頭を下げる様子を、子ども達は見ているはずだ。
なんと情けないことか。
なぜこのような事態があちこちで起こっているのか。
まさか、大の大人達が揃いに揃って善悪の判断がつかなくなっているわけでもあるまい。
恐らく、一流企業と言われる経済者達は、優秀な学歴の持ち主のはずだが、一体何を勉強してきたのか。
企業は利益を出してこそ、その存在意義がある。
このことは自明の理である。
しかし、だからといって手段を選ばず何をしても良いという訳では決して無い。
善か悪かの判断は、企業が存続する上では外す事のできない指針であるはずなのだ。
だが、善か悪かの境目は、見る側の立場の違いによって異なる場合がある。
そしてそれを判断するのは、所詮人間である。
判断を間違う事もある。
したがって、一刀両断に善悪の物差しではかりきれない事象もやむを得ずあることだろう。
だからといって絶対にしてはならないのが虚偽、すなわち嘘をつく事である。
これは道徳として昔から当たり前のように受け継がれてきた常識であったはずだ。
人をだますことは、ひいては自分を欺くこと
報道されていた一流ホテルでの虚偽の表示は、おそらく大した問題意識もなく起こったのではないかと思う。
例えば高値の芝エビは、安いバナメイエビはよく似ているらしい。
調理をしてしまえば、なかなかその違いは区別がつかないものだそうだ。
だったら、味も変わりないなら、バナメイエビを芝エビということにしようか…。
そのような軽い調子で、悪いことをしたという感覚はなかったのでは無いかと思える。
もしそうだったら、潔く表示は芝エビとはせずにバナメイエビとすれば良いのだ。
そうすれば頭を下げる必要は無い。
客の方も、エビを食べにいくのが主たる目的ではなく、一流ホテルのブランドを食べにいくのだ。
一流ホテルの味と品質、そしてステータスを満喫しにいくのである。
そこで芝エビではなくバナメイエビだったからといって客はおそらく落胆はしない。
堂々とバナメイエビと書いてあれば、納得して料理を食べたことだろうと思う。
いずれにせよ、嘘はいけない。
人をだますことは、ひいては自分を欺くこととなる。
自分を欺き続ければ、精神は徐々に麻痺して腐敗していく。
この腐敗が蔓延したとき、企業としてのあり方や信頼も腐って崩れ落ちてしまう。
こういった腐敗がまかり通っている現実には腹立たしい思いでいっぱいだ。
この現実をどう受け止め、どう変えていくか。
私もひっくるめて組織の責任あるものが猛省し、勉強をし直さなくてはいけないのではないかと思う。
大企業ではメディアの前で責任者が頭を下げれば、制裁もなく事は済む。
しかし我々中小企業で同じような事が起これば、たった1度の不祥事でも会社は間違いなく存続できなくなる。
そんな事態を未然に防ぐためには、社員一人一人の自覚と実践がとても大切になってくる。
教育現場から消えた道徳教育
当社では毎朝、朝礼を行っている。
「職場と教養」という倫理の本を参考書として勉強している。
社内ではサークルを作り、先輩が後輩の指導を行っている。
そして毎朝自社の経営理念を唱和し、社員としての行動基準を確認し、一人一人がリーダーとしての自覚を持つように務めている。
そのためのツールとして、社員全員に当社オリジナルの実践手帳を配布し、具体的目標を定め、一つ一つ実践していっている。
しかし、根本的にこのような不祥事が起こる事態を解決しようと思うと、学校教育の現場からの改善が必要であるように思う。
なぜなら、この10年程NPOの活動を通じて地元小学校の先生方と関わり続けているが、その中で先生方にこそもっと道徳教育が必要なのではないかと感じる場面が多数あったからだ。
今の学校教育の現場では、徳育と知育、そして体育を教える事になってはいるが、実際には詰め込みの知育と体育のみとなっている。
肝心な徳育教育が行われていない。
道徳とは五徳(仁、義、礼、智、信)を身につけることである。
「仁」、他者に対する思いやり、「義」は正しい道筋。
「礼」は礼節ある言行。
「智」は正しい判断能力。
「信」は偽らず、欺かず、誠実であること。
これらの五徳を我々大人が率先して示していかなければ、これからの社会を築いていく優秀な人材は育ち難いと思われる。
では、誰が道徳を教えるのか?
教える側の人格が問われる。
故に、教育内容を変えるために大きく舵を切るには何十年という単位で時間が必要になるだろう。
それまで待つわけにはいかない。
そこでとりあえずは、できるところから、身近なところから改善をしていきたい。
まずは家庭からの見直しが必要だろうと思う。
そして、そのためには集って勉強する場所が必要だ。
これについては長くなるので、また次回書いてみようと思う。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。