「日本で最も住みやすい街」、「環境がいい街」でたびたび名を連ねるのが富山県だ。
その理由はいくつかある。
台風、地震等の自然災害が少ないこと。
そして豪雪地帯のイメージが強い富山だが、意外にも雪が少ない。
そして、良質で豊富な水があること。
その豊富な水を活用して格安の電力供給が可能となり、日本海側屈指の工業集積地でもある。
最近では、アジア諸国からの玄関口としてその地の利を活かし、積極的に企業誘致を行っている。
安い電力と豊富な水、そして住みやすく、優秀な人材を確保できるということで、大手企業が続々と移転し始めている。
富山は増々活気づくことになりそうだ。
そして美しく豊かな自然がもたらす山海の珍味。
うまい米、新鮮な野菜、そしてその独特な地形で育まれる豊富な魚介類。
また、「富山の置き薬」でも有名であるが、薬の町でもある。
その他、鋳物、漆器、ガラス、木工挽物、彫刻等の工芸の町でもある。
まさに、多種多彩な魅力溢れる富山は、実に美しい町だ。
私はそんな富山県にかれこれ7年間、年に数回は訪問している。
その理由は、富山県が若手起業家を育成するために行っている、「とやま起業未来塾」の県外講師として関わっているからだ。
この「とやま起業未来塾」は2005年からスタートし、官民一体での若手起業家育成機関として、毎年多くの起業家を生み出している。
その卒業生は今年で7期生となる。
そしてそのOBは、「とやま起業未来塾学士会」という組織を作り、卒業生自らが運営し、卒業後も活発に交流している。
そのおかげで皆仲間意識がとても強く、お互いのビジネスにおいても協力しあっているようだ。
近頃は卒業生の創業率も高くなり、それぞれが連携をとりながら頑張っている。
その協力体制は端で見ていてとても心強く、素晴らしいと思う。
富山県の面白さは、中小企業の事業者がやたら元気がいいことだ。
やる気溢れる若者がたくさん育っていく背景には、こういう元気な中小企業が多いことが、多いに影響しているだろう。
私が関わっているこの「とやま起業未来塾」では、塾生は半年のカリキュラムでみっちりと仕込まれる。
その間彼らはみるみる変わっていき、人間として一回りも二回りも大きくなる。
その変化は話し方、顔つき、考え方等に現れ、塾生本人に自信がついてきたことがはっきりと分かる。
その変化を目の当たりにすることは本当に嬉しく、講師として冥利に尽きる。
そんな若者の中から、これまた面白いビジネスや商品、サービスが生まれてくる。
例えば、富山と言えば「置き薬」で有名だが、その薬を入れるための瓶を製造しているガラスメーカーも数多くある。
建築用の大型曲げガラスは、富山でしか作れない。
ガラスは富山の地場産業でもある。
そのガラスの技術を使って、ペット用の骨壺を作った男がいる。
骨壺と言われなければ分からない程、見事な技術でオブジェとしても美しい。
たかがペット、されどペットで、ペットを愛するオーナーから絶賛されているそうだ。
また別の例では、紙バンドを使ってバッグやアート生み出し、その技法を教える教室を次々と展開している女性経営者がいる。
元々はエアブラシを使ってアートを描くアーティストを志していたが、私の指導で一気に方向転換。
その後出会った紙バンドという素材を使って独自の技法を編み出し、あっという間に教室を軌道に乗せた。
今、脂がのっている塾生の一人だ。
その他にも、タイル職人からアーティストへ転身した者。
本業は材木屋だが、オリジナルの革製品用ミツロウクリームを開発し、販路開拓して頑張っている者。
有名ではなかった富山のぶどうを、高級ブランド品にまで作り上げていった者。
親の稼業をついで米農家となり、独自の販売ルートを開拓している者。
富山の地場産業である木彫技術を、東京都内のギャラリーで高値で売れる程のアートにまで高めていった者。
筆一本で、書のアートから様々なインスタレーション等、空間そのものを作品にしてしまうダイナミックな書道家。
特殊塗料を開発し、工場や建築物を省エネ建築へ変えてしまう者。
産業廃棄物を資源化し、海外へと販売している者。
画期的な技術で、しかも低コストな水道配管洗浄サービスを行っている者。。。
まだまだ挙げればキリがない。
この7年間に私が見てきた塾生たちの活躍ぶりは、是非「とやま起業未来塾」のサイトで見てみて欲しい。
●とやま起業未来塾
また、富山県と言えば「トライアル発注制度」も面白い。
「トライアル発注制度」というのは、県が認定した中小企業、ベンチャー企業の商品を「買うて、試して、評価する」取り組みだ。
自社で販路開拓が難しい中小企業を積極に支援する制度である。
私自身は、この「トライアル発注制度」のコンサルティングを受け持っている。
こちらのコンサルティングでは、毎回実にユニークで元気な経営者の方々とお会いすることになる。
長らくモノ作りに携わっている私でも、思わず舌を巻くような技術にお目にかかることが多い。
以下はそのほんの一例である。
●ゼンマイ発電装置
バネの力を利用して発電し、音声を出す装置を商品化。
電気不要なのでどこにでも設置でき、全国の観光地の案内掲示板等に使用されている。
近頃はさらに、この仕組みを利用して水力発電にも取り組んでいる。
●小型ハイブリッド発電機
小型で安価なソーラ発電と、風力とのハイブリッド発電機。
その設置のしやすさから、駐車場等の照明器具に利用されている。
●ベーシックデッキ
再生木材と再生樹脂を原料とし、新しい建築資材を開発。
木材のようなささくれやひび割れもなく、水にぬれても強い。
木材に比べて変色や変形が少なく、手入れも簡単。
●独自の冷凍技術で生のホタルイカを通販
寄生虫がいるため生食は難しいホタルイカを、独自の急速冷凍技術を使って刺身で食べられるホタルイカを製造加工している。
安全で美味しいお刺身ホタルイカを、全国へと通販している。
等等、まだまだあるが長くなるのでこの辺にしておく。
何回行っても新しい発見がある街、富山。
しかし一言で富山といっても、様々な顔があり、地域によってその表情は全く違う。
私は食うことが楽しみなので、富山に行けば旨いものには目がない。
氷見の寒ブリ、富山の郷土料理の鱒寿司、白エビ、ホタルイカ…。
魚は何でも旨い。
昔から船の交易が盛んで、北前船の影響で昆布の消費量日本一としても有名だ。
米は旨い、水も旨い。
そして肉もまた旨い。
最後は食い物の話になってしまったが、それもまた富山を訪れる楽しみの一つである。
そして今年もまた、様々な人や技術に出会えることが楽しみで、とてもワクワクした気持ちでいる。
また、冒頭の街づくりが出来たのも、富山県トップの強いリーダー性があればこそ。
そして、その周囲で一丸となって支える県職員の働きには、いつも脱帽する。
私自身もそこに参加していることに、とても感謝している。
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